変わらない流れ

 日頃からWilson K1を愛用している本職の常連さんの要望で、Wilson K4も取り付けました。

 

 K4の取り付け位置は、Wilsonの推奨では弦から9mm離れたところに取り付ける。

 当店では、あえて弦から10mm離れたところに取り付ける。

 この1mmの違いは、日本とWilson本国であるデンマークとの音楽文化の違いという観点からの差であって、そこは当店が代理店となる前にWilsonと議論を交わして、了承を得ています。

 その〈違い〉についての話題は、またいずれ書くか…書かないか。

 

 

 今回は、

“弦から11mm離したところに取り付けたら、どうなるのか?”

 という提案をオーナーから受けました。

 

 私自身は、11mmで良いサウンドが得られることには懐疑的でした。

 ただ、そもそもWilson K1は弦から相当離れた位置でも問題なく稼働していますから、取り付け位置と、取り付け作業の精度が維持できれば問題はないはずです。

 

 結果的に、私が11mmで取り付けることを了承したのは、オーナーが弓を多用して演奏するスタイルの演奏家だったことも理由としてありました。

 

 K4の場合、駒から10mmの位置で弓を使用してもサウンドが硬すぎることはないですが、〈柔らかさ〉を求めるのであれば、確かに11mmという選択肢もあるわけです。

 

 

 Wilson K4を弦から11mmのところに取り付けてみる。

 弓を扱うのであれば、非常に良い。

 ただ、やはり指で弾く(ピチカート)場合は『一般的なピックアップとして考えれば非常に優秀だが、Wilson K4として考えるなら、少しサウンドが甘すぎるかも』という印象はありました。

 もっともWilson K4にサウンドの甘さを求めるのであれば11mmでも良いですが、

“これは一般に(甘めのサウンドを)普及させるなら、10.5mmぐらいが限界のような気がしますね。”

 と、オーナーと話題になりました。

 11mmは、本当に〈そのサウンド〉を求めている人以外には、ちょっと過激な設定のような印象があります。



 コントラバスのピックアップの多くは、最終的に職人の取り付け技術に、その性能を依存しているものが多いように思います。

 Wilsonなどは、その最たるもので『Wilsonの性能を生かすも殺すも、取り付ける職人の腕次第』というのは、これまでに幾度も述べてきました。

 

 

 それに対して、コントラバス職人がこれまで、どれほどピックアップを取り付ける技術習得に修練を積み上げてきたかといえば…おそらく、ほとんどないと思います。

 『取り付ける技術』は、文字通り〈取り付ける〉という作業だけでは終わらない。

 そこから最終的に楽器のサウンドのバランスを整える(楽器の)調整作業まで完了することができて初めて『ピックアップを取り付ける技術を習得している』と表明できる。

 

“なんとなく所定の位置に取り付けました。”

 という低次元の話ではない。

 

 普段、私は気軽に記事を投稿していますが、相当の時間を修練と研究の時間に消費をしています。

 

 ピックアップマイクを使用する演奏家にとって、ピックアップマイクの取り付け技術は、その演奏家の〈音楽〉にとっての生命線でもある。

 ピップアップマイクの取り付けの精度が高いのか低いのかで、その演奏家の〈音楽〉の質は絶対に左右されてしまう。

 

 結局、職人側に、その意識が有るか無いかということなのだと思います。

 

 

 日本で代表的なYAMAHIKO、世界的に有名なWilson、そのどちらとも、もう40年近くの歴史を積み上げてきました。

 でも、その取り付け技術の精度は、いまだに進歩していないし、進歩していく兆しも見えない。

 

 

 

 演奏者からの需要(要望)がないから、進歩発展しないのか?

 職人の怠慢ゆえに、進歩発展しないのか?

 

 これは、なかなか難しい問題のように思いますし、そう簡単に変わらない流れのように思います。