​Roland CUBE-60 BASS



 1970年代後半に発売を開始された『Roland CUBE』シリーズのベース用アンプです。

 今回は、こちらをレストアしました。

 電解コンデンサーを Nichicon KAシリーズに、主要フィルムコンデンサーを Siemensに交換しました。

 レストアするにあたって、コンセプトとしては『Rolandらしさを残しつつ、現代の音楽現場でも日常的に使えるサウンドに』ということで、これらのコンデンサーを使用しています。

 1980年代などの古いベースアンプの音は、現代のものに比べて柔らかい音(言い換えると、音の輪郭が聞き取りにくい音)の傾向があります。

 それは現代と比較した時の性能の単純な優劣だけではなく、その時代の求める音でもあったわけで、一概に良し悪しも語れません。




 というわけで、今回はオリジナルよりも音に少し輪郭が出るように手を入れてあります。

 レストアの手順としては、入荷した時に、まず接触不良などの小さな不具合を解消して、オリジナルの完動品に仕上げます。

 そこから、キャビネットに吸音材を貼りました。


 キャビネット内部に吸音材を入れてから、再度、音の確認。

 そして、どのような音の方向性に手を入れていくかを考えました。

 電解コンデンサーには『Nichicon KAシリーズ(Nichiconの最高級グレード)』を選びました。



 Nichiconの KAは比較的新しいもの(2011年発売開始)で、一般的な FWやハイグレードの KZよりも低音域から高音域までバランスが良く、音抜けも抜群に良いです。

 あまりにバランスが良く優秀なので、悪くいえば『個性の無い音』ともいえるのですが、東信工業の UTSJのように中低域に若干癖のあるコンデンサーよりは、KAのようなコンデンサーの方が、Rolandのアンプとは相性が良いと考えました。

 

 フィルムコンデンサーには WIMAを使うことも考えましたが、WIMAは意外と個性が強く、私の印象では『わりと明確に音の輪郭を作り上げるコンデンサー』というイメージがあります。

 今回は、吸音材を入れることで適度に音の輪郭を出すことに成功したので、あえて WIMAは使いませんでした。

 それにコンデンサーを使って音の輪郭を出そうとすると、どうしても〈電気的な音〉になってしまうので、音の輪郭を空気感で出そうと思ったら、やはり吸音材で対応する方が良いと考えました。

 そこでフィルムコンデンサーには Siemensを採用しました。

 Siemensは、音に艶(つや)を出します。

 Nichicon KAの、ともすれば無機質になりがちなサウンドを、 Siemensで少し味付けをした感じです。

 

 スピーカーユニットに関しては、非常に状態が良かったので、オリジナルをそのまま採用しています。

 徹底的に現代的なサウンドに近づけようと思うのであれば、ユニット交換は効果的ですが、今回のコンセプトとは少し違うので、見送りました。

 

 外観については、あえて『古さ』を残して、大きな破損に関しては修理してありますが、基本的に『歴戦の勇姿』の雰囲気は残してあります。

 正面のネットに穴が空いていますが、これは周囲を接着剤で補修・補強をして、その上に艶消しクリアーを塗装することで、修復箇所を目立たなくしてあるので、通常使用において、穴が広がることはありません。

 ツマミに関しては、少しお洒落なものに変更しました。



 結果的に、80年代のRolandサウンドを残しつつも、コントラバスや5弦ベースの低い音であっても、音程感のある低音が出せるようになりましたので、非常に扱いやすいベースアンプに仕上がったかと思います。