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継承 その2

 本日は、若い弦楽器職人さんが遊びに来てくださって、色々と意見交換や情報交換ができました。  広い意味での『若い職人』といえば、私の交友関係の中でも関わりの深い職人が幾人か頭に浮かびますが、『若い弦楽器職人』というのは珍しいので、ちょいと新鮮でした。

 そこで話をしながら気が付いたのは、思った以上に『コントラバスという楽器に対する正確な知識が少ない』ということでしょうか?  彼ら若い職人が勉強不足というよりは、そもそもコントラバスについて正確な情報を持っている先輩職人も少ない。  結果的に、本人たちは非常に真面目に、真摯に仕事に向き合っているのに、指導者がいないのです。

 『駒を、こうやって削ると、楽器全体がこのように響く。』というような理論的な思考の組み立て方法があるにも関わらず、それを教える人がいない。 “う〜ん、何か、もったいない気がする。”  と思いました。

 というわけで、 “あたしの持っている知識と技術で良いなら、いくらでも教えてあげるからね。”  と約束をしました。

 確かに、私自身は親方から何かを教えていただいたことも無く、自分自身で考え実践していく上で技術や知識を身に付けた古いタイプの職人ですが、今は〈そういう時代〉でもありませんし、そもそも〈技術〉は、あくまで〈手段〉ですから、その技術をどう自分に合わせて使っていくのかは、それぞれの職人の感性ですので、最終的には本人の努力は不可欠です。  そして、私から何かを学ぼうと思うか、思わないかも、本人の意思です。

 最近、どこかの伝統芸能であったか伝統工芸であったか、長い歴史の中に身を置いている人が話されました。 “『伝統』と『継承』は違います。師が弟子に伝える、それが継承。それが長い年月をかけて今(現在)見たとき、それが伝統。”  なるほど、上手いこと表現するなぁ、と感じました。  『伝統』とは結果であって、『継承』は現在進行形ということなのでしょう。

 私の経験上、『伝える側』よりも『受け取る側』が、どこまで必死になれるのかが勝負どころではないのかな・・・と思います。  あくまで『経験上』ですが。

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