絃バス屋さんの音

 おかげさまで、(Facebookの)メッセージ機能を経由して、楽器や機材について相談や質問をいただくことが多く・・・以前、告知したように『緊急性のあるメッセージを優先に返信させていただきます。』としていますので、ちょっと時間のある事務仕事の間に、大量返信。

 もう、この作業を休日などの営業時間外に行ってしまうと、全く休みがなくなってしまうので、遅くなって申し訳ないと思いつつも、営業時間内の隙間(?)と、ちょっと残業時間のようなタイミングで返信させていただいております。



 返信をしながら、先日、私が経験して感じたことと似たような事例があったので、ちょっと書いてみます。



 先日、地域のジャズのイベントを観に行きました。

 ここ最近、小さなライブハウスのような規模の会場で聴く機会が多かったので、収容人数800人ほどのホールでジャズの演奏を聴くのは久しぶりでした。

 この規模の広さ会場になってくると、コントラバスは当然のようにPA(音響機器)を通して、会場の大きなスピーカーから音を出すわけで、楽器本体の生の音は全く聞こえてきません。


 楽器のマイクを通して、PAの音響担当者によって作られて出てくる会場の音を聴いて、“・・・ん?” と妙な感覚になります。

“これは・・・『コントラバスの音』とは言い難い(いいがたい)。”

 と感じるわけです。

 いくつかのバンドの演奏を聞きましたが、どれも “違う。” と感じます。

 なるほど。 本職の常連さんたちが “ホールで演奏するときの『音』が、なかなか気に入ったものが作れない。” と言うことの意味を理解できました。(今さらながら・・・。)



 おかげさまで、こういう仕事をしているので、ほんの数秒、音を聴いただけでも〈音〉の分析ができます。

 その音のバランスが悪い原因が『そのそもの楽器の調整が悪い』・『ピックアップに合わせた楽器の調整がなされていない』・『演奏者が無理をして演奏している(=楽器の調整不足)』という、楽器側の問題と、『音響担当者の技術的な未熟さ』・『音響担当者が、そもそもコントラバスという楽器の〈鳴り〉を知らない』など、PA側の問題もあるわけで、そのいくつかの課題の全てを聞き分けます。


 低音はズンズンと鳴っているのに、ハイポジションでの演奏、高音域を鳴らすと音に響きの無い芯ばかりのパキパキした音が出てくる場合、『楽器が鳴らないので、PA側で意図的に低音を増幅している』わけで、逆に楽器は『高音域の音を明瞭に鳴らすために、意図的に低音を削った調整』をされている可能性が大きく、また『ハウリング対策』としても意図的に低音を減衰させた調整がされている可能性もあります。 とにかく『意図的に低音が弱くなるように調整にされた楽器』という可能性は否定できません。

 まぁ、結局のところ、そんなこんなで『最終的に、電気的に色付けされた(?)化粧の濃いコントラバスの音』が客席には届いているわけです。


 当店の場合、ピックアップを使用する場合には、ピックアップを使用した状態で、アンプから音を出しながら調整作業を行っていますし、その楽器のハウリングしやすい音域を上手く避けながら調整する(楽器の響きを作る)ことで、自然な鳴りを維持しながらも、ハウリングしにくい調整を行なっているので、それほどPAの方で大きな音質を変更させなくても対処できるように、楽器側で音を作っています。



 先日のジャズイベントを聴きながら、“まだまだ研究開発の必要性は、あるわけか・・・。” と感じたわけですが・・・・・・よく考えてみれば、本来、それは私の仕事では、ありません。

 とはいえ、当店もオリジナルプリアンプを作っている以上、無責任にもなれません。

 先日、当店のプリアンプを使っていただいている常連さんが、“このプリアンプを使うと、ライブハウスでも大ホールでも、同じように『絃バス屋さんの音』が出るんですよ♡” と嬉しそうに話してくださいました。

 その時は、“そうやって作っているんだから、そりゃ『絃バス屋の音』が出るだろう。” と思ったものですが、実際、大きなホールで聴いてみると、その音作りの難しさを実感できました。



 これから、当店のプリアンプが大きなホールで使用された場合の検証を重ねていくことは必要かな、と思いました。


 個人的には、現状でもそれほど心配はしていないのですが・・・ここ最近、“もう少し進化できそうな気がする。” と、欲も出てきたので。