オペアンプを載せ替える

先日、常連さんと調整の完了した楽器を『Peterson BASS MASTER P200』というアンプで試奏していまして。  

 これは当店では、通常はカバーが掛けられていて、ほとんど使用することはなかったのですが、よくよく見てみて、“これ・・・ほとんど使用されてこなかった、デッドストックに近い状態ではないか?” と常連さんと試奏したり眺めたりしながら、そのような結論に至ります。  音を聴いてみても、どうも新しい部品を使用した際の独特な『妙な音の硬さ』も感じます。    そこで、“これは、ちゃんと使ってやらないと、(このアンプが)可哀想だな。” とカバーを取り外して、店に置いておくことにしました。      とはいえ、ここで常連さんと議論になったのが、このアンプを『オリジナルのまま維持をするのか? それとも、改造してしまうのか?』という話。  せっかく憧れの Peterson を手に入れたのだから、オリジナルで置いておきたいところ。  しかし、実際に使うとなると、当店の他のアンプたちに比べて、ちょっと低音域から高音域の、全体の音色のバランスが悪い気がして、扱いにくさも感じる・・・。      そのあたりの改造の判断は、追々、考えていくとして・・・とりあえずボリュームの部分にノイズ(いわゆるガリ)が発生するので、分解して修理をすることにしました。  すると・・・・・・。  なんと、プリアンプ部分の基盤のオペアンプ(IC)が、半田(はんだ)で直付け(じかづけ)ではなく、ソケット式になっている。(写真4枚目)  “おぉ~。これは、あたしにオペアンプを交換しろという意味か?” などと一人で納得し、問答無用のオペアンプ交換。   こればかりは、仕方なし。    オリジナルのオペアンプは『RC4558』という、1970年代に設計された古いものですが、このアンプが1980年代に設計されたことを考えると、その当時では高性能のオペアンプという位置付けだったようなので、設計に熱意を感じることができます。    というわけで、今回、載せ替えたオペアンプは『OPA2277』という、現代を代表する高性能オペアンプ。  当店のプリアンプ(標準型)でもお馴染みの、高音域から低音域まで癖のない非常に安定した美しい音色を作り出すオペアンプで、 Peterson のようなアンプの個性を活かすには、非常に相性が良いように思います。      そして、“意外と空間に余裕があるな。” ということで、電源のノイズフィルターも搭載させました。    これで、電気回路的に、散漫だった音をギュッと締めつつ、現代の高性能な部品を使用することで、低音域から高音域までの音の解像度と再生能力を底上げします。      次にキャビネットに手を入れます。  今回使用する吸音材はサーモウール。

 実際のところ、ベースアンプのバスレフ型のキャビネットは音質的にもニードルフェルトが最も扱いやすく、サーモウールは密閉型のキャビネットとの相性が良さそうなのですが、今回は柔らかい音色の響きが欲しかったので、あえて、バスレフ型にサーモウールを使用しました。    ここで気になった、バスレフの共振周波数の計算をしてみると、このキャビネット、なんと『77Hz』あたりにピークがある(増幅される)なんとも無意味な設計になっています。  そもそもバスレフというものは、スピーカーユニットの安定して低音の出る周波数の限界値あたりを増幅させることで、結果的にスピーカーから聞こえてくる低音を、より低い音まで安定して再生させるための方法です。    15inch(≒38cm)の大きさのユニットであれば、そのユニットの能力だけでも、低音でいえば30~35Hzぐらいまで再生可能に設計されているはずですから、“77Hzって・・・・・・。” と思うわけです。    まぁ、そもそもの話が、この大きさのユニットであれば、オーディオ世界であれば、このアンプの最低でも4倍以上の容積のキャビネットを使用するのが常識で、自作派オーディオマニアの私の父親なども、この大きさのユニットとなると、20Hz以下の周波数をバスレフの調整で難なく出していたのですから、『このキャビネットの大きさからして、バスレフに期待するのが間違いだ。』とも言えるわけです。  “片方の穴を塞いで計算しても『55Hz』かぁ・・・。” と、どうやっても中途半端になってしまうので、これはこれで、そのままにしておくことにしました。    おそらく、設計者は特に意図もなく、なんとなくバスレフ構造にしたのかな・・・と感じるのですが、果たして・・・。      それやこれや組み直して、完成。  オペアンプを交換して、電源にフィルターを搭載して、吸音材を入れてキャビネットの不要な共振を抑えつつ、スピーカーの裏側(内側)から排出される不要な音域も吸音しつつ、結果的に、 Peterson 独特の、ちょっと痛い中高音域を上手い具合に抑えられたかな、と感じます。  

 今回は、いつでもオリジナルの状態に戻せるように手を入れてみました。  コンデンサーを、ごっそりと入れ替えて、もっと現代風にアレンジすることも可能ですが、それでは Peterson を持っている意味も薄くなってしまうので、これぐらいにしておきます。      ところで、初めて Peterson が記事に『スピーカー(の直径)が大きすぎて、細かい音に反応ができない(反応が遅い)。』と書いたのですが、キャビネット内部に、キッチリと吸音材を入れてやると、意外と音の立ち上がりも早くなったような気がします。    おそらく、15inch(≒38cm)のユニットには小さすぎるキャビネットは、わりと密閉型のキャビネットを同じように、スピーカーが発音した際に内部の空気が圧縮されてユニットが押し戻される現象が少なからず起きていて、それが発音の遅延の原因の一つであった・・・というような感じがします。