HB-45
『HB-45』は、オリエンテの歴史の中で『BO-30』から『HO-38』へ、そして、その後継として発売開始されました。
『HO-38』について、過去に紹介させていただいたことがありますので、少し引用させていただきます。
(HO-38が開発された)1990年代前半の頃といえば、まだ幾つかの国内メーカーがコントラバスを製造し、逆に海外のメーカーとなると、ドイツのルブナーやカール・ヘフナーなどが一般的で、超高級品として、これもドイツのペールマンがあり、あとは個人製作者の楽器が輸入される程度で、現在のように多くの海外メーカーが乱立するような状況にはありませんでした。
そのような中で、『HO-38』は日本国内でのオール単板の楽器としては最も低価格で発売された楽器で、全国の中学・高校の教育現場やアマチュア演奏家の間で圧倒的な支持を得てきました。
この『低価格』は、他の国内メーカーよりも品質を落として採算を取る手法ではなく、品質を落とすことなく、ある意味、採算度外視した価格設定で、発売当時、オリエンテの親方である東澄雄は、同業者から “いくら何でも、この品質でこの価格は安すぎる!” と非難を浴びたほどでした。
ただ、東澄雄は、そこまで身を切ってでも『教育現場に、少しでも品質の良いコントラバスを供給したい』という強い思いで作り、世に出されたのが『HO-38』です。
そのような『HO-38』の流れを受け継いだのが『HB-45』です。
『HB-45』という楽器は、私がオリエンテの修行を終えて、絃バス屋を開業してから新たに作られた型番ですので実際に製作には関わっておりませんが、『HO-38』に関しては、その多くを手がけてきました。
『HO-38』も『HB-45』も、一度プレス成型された厚さ10mmほどの単板を、一般的に高級といわれる『単板削り出し』と同じように、楽器に響きを与えるために削り出しています。
『プレス成型』などと言われると、プレスしただけで何もせずに(削り出すこともなく)楽器の形に作り上げられてしまうイメージがありますが、オリエンテでは、すべての楽器に適切な削り出し作業を行っています。
誤解を恐れずに申し上げますと、腕の未熟な職人が作った『単板削り出し』よりも、熟練職人が削り上げた『プレス成型からの削り出し』であれば、『プレス成型からの削り出し』の方が良いに決まっています。
オリエンテでは、単板の楽器の削り出し作業は、熟練の職人たちが削り上げています。
『HO-38』を作っていた頃に感じたことですから、おそらく『HB-45』も同じかと思いますが、この楽器は削り方を少し間違えただけで、響きの悪い楽器になってしまう。
しかし教育現場で使用される以上、耐久性を落とすことはできない。
『耐久性を維持(=板を厚くすることで丈夫にする)と、楽器の響き(板を薄くすることで、弦の振動を楽器全体に伝える)』という相反することを両立させたのが『HO-38』であり、その後継が『HB-45』ということです。
この『HB-45』という楽器の音の特徴としては、重低音を響かせるというよりは、ゆったりと低音を響かせることが得意で、本来の音の特徴としては、わりと明るめな音の出る楽器かと思います。
ただ、そのような『設計思想から導き出されるサウンド』は、あくまで完璧に調整がなされた場合に響く音なので、最終的には、その楽器を調整する職人の腕次第・・・ということになります。
当店では、オリエンテというメーカーが追求してきたサウンドを読み解いた調整がなされた状態にしてありますので、『HB-45』という楽器の良さ、体感していただけるかと思います。