駒が反る。というと、長年、調整もされずに使われてきた学校の楽器にありがちな事例だと思いますが、こちら・・・ほんの数年で、見事に反ってしまい、使い物にならなくなってしまった駒です。
おそらく、(高い確率で)中国製の安価な駒です。
ずいぶんと前ですが、とある取引先から『安い中国製の駒がある』との話を受けます。その取引先とは、オリエンテ時代からの付き合いなので、強い信頼関係があります。
“価格はともかく、実際のところ肝心の強度的には、どうなの?”
と質問したところ、“はっきり言って、価格相応です。” と即答。
“あぁ〜。『得もしなけりゃ、損もしない。』ってところかぁ〜。”
と苦笑しながら話は続きましたが、結局、当店では扱わないことにしました。
何が『価格相応』かというと、やはり駒の強度の問題が価格に直結しています。
木目の問題であったり、密度であったり、製材の向きであったり乾燥具合であったりと、判断材料は総合的に考えてみるものですが、それらを踏まえて『価格相応』ということですね。
今回の写真の駒も、やはり同じように、総合的にみて質は良くないと思います。
特に、材の乾燥が足りません。
女房などは、この駒に触れてみても “乾燥しているようにしか思えない。” と話していましたが、私が触れてみた感触では、全く乾燥が足りていません。
『含水率・がんすいりつ』などという比率を、材木の中の水分を計測して出す数値で確認する方法もありますが、そういう数値に頼らなくても、職人として修行に入って始めの数年間の下働きの頃に大量の原木に触れることで、自然に材木が乾燥しているのか・していないのかを判断できるようになるのです。
今のような梅雨の時期に一時的に含む水分や、冬の時期に乾燥するのとは全く違う次元で含まれる水分を、手で触れただけで読み解ける技術がないと、木工職人としては半人前です。
インターネットで『コントラバス 駒』と検索をすると、コントラバスの未加工の駒の販売サイトが上位に表示されます。 それだけ未加工の駒を購入する人が多いということでしょうか?
当店にも、自分で駒を立ててみて上手くできないと持ち込まれる場合もありますし、未加工の駒を持ち込まれて『これでお願いします。』という場合もあります。
私は、特に気にしないので、こだわりなく受けますが、その多くは安価な中国製で、もちろんオーナーに説明させていただきながら作業をしますが、やはり強度的に問題が発生する懸念があります。
特に、アジャスターが取り付けられた状態の未加工の駒の場合、加工前の状態でも、アジャスターの取り付けてある場所が小さく割れている状態も目にしたことがあります。おそらく、強引にアジャスターを打ち込んだのでしょう。
私でも、駒を仕入れるときには気を使います。
もし個人で未加工の駒を購入される場合は、まず中国製は避けるべきでしょう。
そして、仮に有名なメーカーであっても、時期によっては、使用される材によって一時的に、若干の品質が落ちる場合もありますので、それも気をつけるべきです。駒も楽器と同じで、個体差が大きいので、一概にメーカーや価格では決まりません。
信頼できる業者から、質の良いものを適切な価格で購入することを、おすすめします。