量産楽器

 オリエンテの『HB-45』、当店のHPにて『解説のようなもの』が、今さら完成。  『HB-45』に関しては、普段から在庫が切れないように入荷しているので、『新入荷』という感じでは無いですが。    『HB-45』という楽器は、『HO-38』の後継にあたる楽器ですので、オリエンテにとっては名刺代わりと呼んでもよいほどに、スタンダードです。  この『HB-45』『HO-38』については、いくらでも逸話がありますので、なかなか文字に起こすことが難しく、これまで放置してきました。     特に私が作り続けていた『HO-38』などは、『The量産』というか『量産器の王道』とでもいうべきか、とにかく売れに売れた楽器であります。  『量産』などと表現すると、あまり良いイメージもないかもしれませんが、実際に本物の材木を使い、木の癖を読みつつ、材質による音の個体差を極限まで少なくしつつ、楽器の鳴りは維持をするように製作することが、いかに難しかったか。 毎回、担当するたびに神経を擦り減らしていました。  

 例えば、1つの楽器を作るとして、その1本だけであれば『同じ機種(または形の楽器)による個体差』という現象は発生しません、その1本だけですから。  また、その楽器を他の楽器と比較してみても、それこそ “コントラバスは個体差が大きいからね。” と言ってみたところで、それは事実なので、それは良くも悪くも『楽器の個性』と認定されます。  しかし、オリエンテの楽器たちは、そもそも型(形式)があり、材料の品質も製作方法も決められているので、当然、同じ条件で作られた楽器は多いわけで、買い手としては、あまり個体差があっては困るわけです。  簡単にいえば、“『HO-38』は、とにかく個体差が大きいので選ぶのに困る。” では、メーカーとして失格なわけです。  あまりに個体差が大きすぎると、“何のために、型番が決まっているの?” という話になってしまいますね。  おそらく、私の経験からの計算では、『HB-45』は年間で、ざっと100本(以上)製作されているかと思います。      量産される楽器の個体差を排除しようと思った場合、簡単なことは『鳴りを悪くする』ということです。『なんとなく低音も高音も出ない楽器』であれば、個体差は非常少なくなります。  『鳴りを悪くする』ということは、作業工程的には、板を厚いままで仕上げれば良いのですから、作る側としても、お手軽に『個体差の少ない楽器』が作ることが可能です。  海外の楽器を見ても、実際に、そのような製作方法を採用している楽器メーカーは、決して少なくないように思います。  オリエンテの場合、私が二代目から受けた依頼(指示)は、『楽器の鳴りは極限まで良く、そして個体差も極限まで少なく♡』という “それは、面白い冗談だ。” と言いたくなるような(いや・・・実際に言った)、無茶苦茶なオーダーでした。  そこで私は、それぞれ、使用する材木の質(癖)を読みながら微妙に削り出す厚みを変化させることで、最終的に楽器の個体差を少なくすることに成功させました。      そうなのです。 確かに1本の楽器に手を掛けて、時間をかけて、じっくり作ることも素晴らしいですが、どんなに大量に作っても、同じ品質を維持できる技術も、もう少し賞賛されて良いのかな、と思うわけですが・・・いかがでしょう?