ここ最近、3弦のA(ラ)の音ではなく、2弦のAの音のウルフトーンの相談が多いので、一般的な解消方法をご紹介。
『一般的な』というのは、楽器自身の個性(設計思想も含む)であったり、修理履歴であったり、その楽器の状態によっては消せない場合もあるので、『一般的な』という解釈で、お願いいたします。 『ウルフトーン』というものの学術的な見解はともかく、簡単に説明をすると、振動が駒の上で効率よく流れないと、不要な共振が起こり、音が波打つ・・・という現象です。 そこで、『どこで振動が渋滞をしているのか?』を見極めることが重要なのですが、いくつか〈振動の渋滞箇所〉を見極めるポイントとして、弓で弾いた時に、弓の動きのアップで違和感を感じるのか(?)それともダウンで違和感を感じるのか(?)、その二つを比べるだけでも、かなり渋滞箇所を見つけることができます。 どうも、振動の初動の向きによっても、ウルフトーンの発生の差が多少なりとも、あるようです。 一般的には弓をアップで弾いた時、すなわち1弦側に弓を動かす時に違和感がある場合には、写真でいえば、〈A〉を通って〈C〉の方向に弦の不要な振動を逃がすように駒を削ると、かなりウルフトーンは軽減されます。 逆に、弓をダウンで弾いた時、すなわち4弦側に弓を動かす時に違和感がある場合には、〈B〉を通って〈D〉または〈C〉の方に振動を流し込むことで対処できます。 ただし、基本的に〈C〉の方向に振動を逃すと、その弦の音の響きを削りとる特性があるので、不要の共振だけを取り除くには、ちょっとコツが必要です。 〈B〉を通って〈D〉に流し込むという方法も、基本的に〈B〉は3弦の振動経路ですので、これもまた、扱いを間違えると3弦の音色に悪影響を与えてしまいます。 結局、重要なことは、ウルフトーンだけではなく楽器の調整全てに対して言えることですが、各弦、それぞれから音の響きを貸し借りして、上手く共振させることです。 その作業の中でウルフトーンを解消させるために響きを削り取ってしまった場合には、駒の上の振動の中から、相性い響きを見つけ出して補完して、最終的にバランスの良い音色に仕上げます。 各弦を上手く共振させて響きを作るような調整でないと、最終的に『音色に〈まとまり〉の無い楽器』に仕上がってしまいます。 ちなみに、写真の〈E〉の方へ振動を逃すと、ウルフトーンは増幅されてしまうので、よほど “4弦側に振動を逃す必要がある!” という強い確信を得られる状況でなければ、だいたい・・・失敗します。 基本的には、どの弦の上で発生するウルフトーンにしても、この写真でいうところの『〈C〉と〈E〉に流し込む振動の割合のバランス』を整えると、かなり軽減できるかと思います。 こればかりは、あまりDIYには挑戦せずに、弦楽器専門店に相談をして任せた方が、よろしいかと思います。
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