店での作業中のBGM用に設置してあるオーディオのスピーカー・システム。
これは、私が絃バス屋の開業に合わせて、Electro-Voice の『EVID 6.2』というシステムに、PARC Audio のユニットを組み込んだもの。
あまり高品質(高音質)になりすぎず、長時間、音楽を流し続けても耳が疲れないように調整してあるのですが、ここ最近、ちょっと音が鈍いように感じました。
そこで、夕方からの来客予定も無かったので、久しぶりに力をかけて、このスピーカーを鳴らしてやります。
簡単に言えば・・・『爆音で鳴らす』ってやつですね。
幼い頃から数多く国内外のオーディオに触れてきましたが、『適正に使用しないと、鳴らなくなるスピーカー』というものは珍しいかと思いますが、少なくとも、このPARC Audio のユニットは、定期的に大音量で鳴らしてやる必要がある感じです。
もしかしたら、PARC Audio というよりは、ウッドコーンという特殊素材の影響が大きいかもしれません。
コントラバスにも『鳴り癖(なりぐせ)』というものがあります。
鳴らない楽器を調整して〈鳴り〉を出そうとしたとして、その時(調整をした瞬間)は “音の芯ばかりで、響きが弱い・・・。” と感じたとしても、時間の経過とともに、その楽器の音に響きが出てきたりします。
それは、これまで『鳴らないのが当たり前(?)』のような状態から、理論上(構造上)確実に〈鳴り〉が得られる状態になっても、その楽器が〈鳴らない〉という癖から抜け出すには時間がかかる、というわけです。
『長期間、弾かれることの無かった楽器は鳴らない。』ということをご存知の方は多いかと思いますが、それも言ってしまえば『鳴り癖が付いていない。』ということです。
そもそも、楽器の個体差というか、個体の(音の)性格を知るには幾つかのポイントがあって、弦楽器製作者であれば、そのポイントを見極め、総合的に考えれば、実際に弾いてみなくとも、その楽器の本来、出てくるべき音色を感じ取ることは容易です。
削り出された板の厚みのバランスや、塗料の硬度や塗膜の厚さ、使用されている弦と魂柱の位置や駒の削り方の関連性、それやこれや。
そうやって分析をして、『本来であれば、このように鳴るべき〈音〉』を導き出して、そこから、その楽器の現状の〈音〉を確認して、調整作業によって〈出るべき音〉と〈実際に出ている音〉の誤差を消していけば、『鳴らない癖』が付いた楽器に対して『鳴る癖』を付けてやることができます。
これを間違った〈読み〉で、強引な調整で楽器を鳴らそうとしても『鳴り癖』を付けさせることは難しいと思います。
楽器の鳴り癖をつけるには、弦楽器職人の調整技術だけではなく、演奏者であるオーナーも日頃から楽器を鳴らしてやらなければ、鳴り癖は付きません。
それもまた、単に『楽器を鳴らす』というのではなく、低音域から高音域まで、広い音域で鳴らす習慣をつけてやると、その楽器は非常に音のバランスの良い楽器になります。
以前、遊び半分で実験映像を投稿しましたが、コントラバスは音域によって表板の響く場所が違います。
だから、日頃から低音域から高音域まで、満遍なく(まんべんなく)弾き込んでやることで、常に表板の全体が振動しやすい状態を維持できます。
そうすることで『輪郭のある低音』や『太い響きのある高音』を得ることができます。