駒の足裏の話。
先日、表板が変形してしまった駒の足裏合わせの記事を掲載しました。
そのときに、悪い例として、足裏の中心をくり抜いている事例を紹介しましたが、今回も同じような事例です。
この駒の足裏の中央も、不要に深く削り取られています。(写真1枚目)
しかし、駒が立てられている状態では、全くわかりません。
すなわち、演奏者が不具合を判断することは不可能です。
これは完全に職人の悪質な手抜き行為です。
このように駒を立てた場合、弦の振動が適切に表板へ流れて行かないので、楽器の音量が小さくなります。
音量感が無く、響きの少ない低音が出てきます。
そして表板へ振動が伝わらないという事は、駒の上の弦の振動の
逃げ場がないわけで、表板へ逃げきれなかった振動は、逆流するように、駒から弦へ戻ってしまいます。
そう、このような駒は、ウルフトーンの直接的な原因でもあります。
問題なのは、音響特性だけではありません。
本来であれば、表板は駒の足裏全体で弦の圧力を受け止めますが、このように中央が削り取られていると、圧力を〈面〉ではなく〈線〉で受けることになるので、写真2枚目で確認できるように、駒足の周囲の部分が足の形に陥没してしまいます。
このような駒足の合わせ方は、コントラバスの文化を嘲笑う行為であり、なおかつ楽器に大きな負担をかけて、楽器の寿命を縮めるという、最悪な行為です。
本来のコントラバスの音が出ない上に、楽器を破損させるのですから。
悲しいことに、珍しいことでもない。
このような事は、100%、職人の責任です。
言い訳のしようがない。
こればかりは、職人の倫理観に任せる以外に解決方法はありません。
何か気の利いたことを書こうかと思いましたが………なにも出てこないので、今日はこれぐらいにしておきます。