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駒の交換 その後の話

過去に、コントラバスの駒を交換した直後よりも、翌日の方が音の響きが良いことを『カレーは二日目からが美味い』という例えで投稿したことがあります。


 

 先日も、駒を交換した直後は “どうもG線(1弦)の音の響きが弱い…” と感じたものですが、


“これは下手に手を入れるよりも、一晩寝かした方が良さそうだ”


 と何もせずに放置をした翌日、確認をするとG線の音の響きは他の3本と同じようなバランスで鳴っていました。


 駒の交換作業に関しては、当店では、可能な限り即日対応をしていて、10時ごろの楽器をお預かりすれば、夕方には納品できるぐらいの作業時間です。


 当店としても、即日対応できるものを何日も店に置いておくのも無駄ですし、演奏者としても、できるだけ早く手元に楽器を戻したいというのが心情ですから、即日対応というものは職人にとっても演奏家にとっても良いことであるのは間違いないことです。


 ただ実は、楽器にとっての理想は一泊二日か、二泊三日程度の時間が丁度良い…と言えなくもない。

 そこはどうしても人間の都合で楽器を振り回してしまうわけですが、そもそも駒を交換してから、数日程度楽器屋に置いておいて調整をしたところで、音楽の現場に持ち込んで演奏者が思いっきり弾けば、これまた思い切りサウンドのバランスは崩れるものです。


 そう、駒を交換した場合、良くも悪くも1ヶ月程度は、サウンドは安定しません。


 駒を交換することで、楽器は、これまで受けたことのない振動を受けることになります。(駒から送られてくる弦の振動、その倍音成分が、これまでの駒と同じということは、ありえません。)


 その振動を受けて、楽器自身がその振動を受け止めて処理する(響きとして変化させる)のに、時間が必要になります。


 その時に、どうしてもサウンドのバランスが崩れてしまう。


 そうやって、ある程度、楽器自身にサウンドを〈調整〉させてから、今度は職人が微調整をして、全体のサウンドのバランスを整えていきます。

 だから演奏者側の年間スケジュールがあったとして、そこに大きく重要な舞台があるとしたら、理想としては本番の半年前に駒を交換すれば、ベストな楽器の状態で舞台に上がれると思います。


 個人的な感覚では、駒を交換して4ヶ月前でも、ギリギリ間に合うかなという感じです。

 本番3ヶ月前だと、まだちょっと不安定印象があるというのは、経験上、感じています。


 もちろん、駒が極端に反っているなど物理的な理由で緊急で駒を交換する必要が生じることも多々ありますが、そうではなく、戦略的に駒を替えるというのであれば、大きな本番の半年前ぐらいに駒を交換して、駒交換から1〜2ヶ月後と、本番前の半月〜1ヶ月前の二度ほど楽器を調整すれば丁度良いかな、と思います。


 こんなことを書くと “そんな、半年に二度も楽器の調整に行くはずもない” と言われそうですが、少なくとも当店では、わりとよくある流れです。


 それだけ、駒の交換というものは、演奏者と同じように楽器にとっても一大イベントだ、ということです。




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