9分弱の映像ですが、実際の作業時間は30分ほどでしょうか? 今回の楽器は、1996年に作られたオリエンテの HO-30 の調整作業の映像です。 1996年のオリエンテといえば、私は『絶賛、下働きの真っ最中!』です。 さて、オリエンテの1990年代後半には、HO-30 の裏板には、コントラバスに使用される一般的なカエデではなく、ブナが採用されていた時期があります。 この楽器も裏板にはブナが採用されています。 ブナはカエデよりも柔らかい音を出すことができます。 HO-30 は表と裏の板は単板(本物の材木)を使用していますが、横板は合板を使用しています。 合板というものは、カエデよりも柔らかい素材です。
使用している弦は、ピラストロのオリジナル・フラットクロムです。 オリジナル・フラットクロムは太い低音が持ち味ですが、楽器の調整が上手くないと、音に芯がないボアボアとした低音になってしまいます。 かといって、無理やり音に芯を作ってしまうと、今度は音の響きがなくオリジナル・フラットクロムの持ち味を殺してしまいます。
ということで、今回の楽器の調整方法は、いつもと同じような感覚で調整してしまうと迷走してしまうので、注意が必要です。 さて今回は、盛大にウルフトーンが出ています。 映像の冒頭でもウルフトーンが確認できます。 ウルフトーン(今回は3弦)には、大まかに3種類があります。 ・3弦単体の問題 ・1弦が共振している ・4弦が共振している あとは、それらの組みわせで『ウルフトーン』は聞こえてくるようです。 映像では、初めに〈03:40〉あたりで、ウルフトーンの調整を行います。 調整の一番最初にウルフトーンの対策をしてしまうと、楽器全体の音のバランスを取りにくくなるので、ある程度、楽器の〈音〉が決まってきたところで、ウルフトーンを消していきます。 この〈03:40〉のウルフトーンは、1弦と共振してしまっているので、1弦側で調整します。 次に調整を進めていくと〈05:59〉あたりで、またウルフトーンが発生します。 こちらは、3弦単体の問題なので、3弦を調整してウルフトーンを消します。 最後に、映像では字幕を入れませんでしたが、〈07:34〉あたりで、またウルフトーンが確認できます。 こちらは4弦と共振していましたが、そもそも、4弦に音抜けが必要だったので、その対応と一緒に、そのままウルフトーンを消しました。 この映像で、ウルフトーンとは単純に一つの要因で起こるものではないことも、よく判るかと思います。 さて、この楽器も、この状態で8割程度の調整です。 最後はオーナーに試奏していただきながら、音を作っていきます。 コントラバス職人が試奏をしながら楽器の調整をするということは・・・限界があると思います。 やはり、目の前で弾いてもらいながらの調整の方が、作業が早いです。
Comments