朝顔と、コントラバスと。

 今年初めて入手して撒いた(まいた)『鹿苑(ろくえん)』という品種の朝顔が芽を出しました。

 朝顔の分類としては『黒鳩』ということで、色としては紫というよりは黒というか、青味(あおみ)がかった薄墨に近い色の花が咲く・・・らしいです。

 厳密には『青色系・濃色・黒鳩』ですので、紫色系とは別系統ですね。



 朝顔の愛好家の間では、だいたい花の直径が17cmを超えると大輪ということになるようで、さらに大きなものになると花の直径は20cmを軽く超えることもあります。

 とはいえ、普通に育てていると、頑張っても直径15cmが限度です。

 先日、朝顔仲間と『17cm超えに挑戦するべきか?』という話題になります。

 17cmを超えるには、大量の液体化学肥料を継続的に投与して、言ってしまえばドーピングをして強引に成長させて大輪の花を咲かせます。 まぁ、野菜のように食べるものではないので、化学肥料を大量投入したところで何か害があるわけではありませんが・・・

“どうも、朝顔に無理をさせてしまっているようで、心が痛い。”

 という話になります。

 結局、“今年も、あまり朝顔には無理をさせずに健康的に大きくしよう。”ということになりました。



 コントラバスの場合でも、初めて当店に調整に持ち込まれた際に確認をすると、

“これは、かなり楽器に無茶をさせた調整をしているな・・・”

 と感じる時があります。

 コントラバスという楽器の、そもそもの構造による限界(限度)があったり、その楽器の個体差(製作意図)があったり、当たり前の話ですが、その範囲を超えた領域で調整をしてしまうと、楽器に負担をかけることになります。 それが強度的な問題であったり、音が安定せずに破綻してしまったり、音が抜けているようで抜けていなかったり。

 音量であったり、響きであったり、操作性であったり、演奏者側の要求というものは尽きないものですが、楽器自体にも個体差による得手不得手(反応の良い悪い)はあるわけで、本来であれば弦楽器職人の方で、“これ以上は楽器に負担をかけてしまいますよ。” と提案することが理想だとは思いますが、今のコントラバス界ではオーナー達から話を聞いてみると、それもなかなか難しいようです。


 『演奏者に寄り添った調整を』という売り文句は多いですが、当店は、一切、そういうことを表明したことは、ございません。

 私の調整方法は、あくまで『演奏者と楽器の、最良な場所を見つけ出して落とし込む。』ということが絶対で、そういう意味で『楽器と人間は対等であるべき』とも考えます。 楽器と人間、どちらかに優位性のあるような調整は、私は好みません。

 楽器は人間の言葉を語ることができないので、そこは弦楽器職人が代弁してオーナーに楽器の意思を語るべきですし、オーナーの意思を代弁して楽器に語りかけるように手を加えることが、楽器の調整というものの本質かと、(あくまで)私は思います。 もちろん、弦楽器職人それぞれに想いがあるので、それが絶対だとは言いませんが。





 朝顔もコントラバスも、あまり人間の要求を押し付けて無理をさせてしまうのは、結果的に自分自身の心に〈ゆとり〉を持てなくなってしまうような気がするのですが・・・さて、どうでしょうか。