ここ最近、楽器の調整作業の映像を幾つか投稿していますが、その映像を見て、もし『自分でやってみたい!』というチャレンジ精神が旺盛な方がいるかもしれないので・・・あくまで自己責任ですが、他の音に影響の少ない部分の調整方法を、ご紹介します。
あくまで自己責任です。
基本的には、専門店に持ち込んでください。
今回、ご紹介するのは、1弦の高音域の音量を上げて、響の良い明るい音色に仕上げる方法です。
指板の上のポジションでいえば、写真2枚目のマスキングテープが貼ってあるあたりの音域です。
映像で出てくるところの『1弦の高音域の音を明るく仕上げます。』という字幕の、あれです。
駒を紙ヤスリで削る場所は、写真1枚目の、黒く塗りつぶした〈A〉の部分です。
ちなみに、黒く塗りつぶした部分から2mm ほど上の場所は、1弦のA(ラ)やB♭(シ♭)の音をコントロールする場所で、ウルフトーンを処理する場合に削ることがあります。
だから、下手に削ってしまうと、逆にウルフトーンが発生するリスクが増大します。
コントラバスの駒はヴァイオリンに比べれば巨大ですが、だからといって決して〈大きいもの〉ではないので、削る場所を数ミリ間違えるだけで、意図しない、全く違う音に影響を与えてしまいます。
さて、〈A〉の部分を削ると、映像でも聴き取れるかと思いますが、まず音量が上がります。
そして、音に芯を与えつつ、高い音の響きが増します。
これは、特に低音弦である4弦の音にも影響を与え、4弦の音の輪郭に高い音の響きを少し乗せることにもなります。
ただ、4弦の音の輪郭に対して最も影響を与える場所は別のポジションにあるので、その影響は微々たるもので、調整の際にも〈隠し味〉のように使う程度です。
〈A〉の部分を削り、1弦の高音域に、音量と高い音の響きを与えた際に、“なんとなく、音がキラキラとし過ぎている・・・。” と感じた時には、〈B〉で塗りつぶした場所を削ると、1弦の高音域に低い音の響きを与えることができます。
これにより、高音域にも太い響きを与えることが可能なわけですが、この〈B〉は、元々、4弦の音の響きに直結しているので、加減を間違えると、4弦の音の音程感が薄くなり、ボアボアと鳴ってしまいます。
もし、DIYで自ら駒の調整に挑戦するのであれば、あまり〈B〉には手を出さずに〈A〉だけで抑えておく方が、よろしいかと思います。
ちなみに、映像でも確認できるかと思いますが、〈A〉を削っても、影響があるのは高音域のみで、1弦の基本的な音色に変化はありません。
そういう意味では、変化を与える範囲も少ないので、DIYで挑戦しやすいかと思いますが、本来、映像でもご覧いただける通り、駒の上の様々な共振を駆使して音色を決めていくものですから、少しでも不安を感じる場合は、無理に手をつけずに、弦楽器専門店へご相談ください。