悲惨な楽器

普段は他のメーカーであったり製作者の作った楽器に対して批判的な記事を書くことはありませんが、それが明らかに悪質な手抜きであったり、詐欺まがいな仕事をしていた場合には、やはり弦楽器職人として『公開しなければならない』という責任はあると思いますので、公開する場合もあります。      今回は、非常に悪質だと判断しました。    この写真は、『Gliga・グリガ 』というルーマニアのメーカーのコントラバスです。  えぇ・・・見たまま、誰にでも、これが通常ではないことが理解できるかと思います。

 


 Gliga といえば、現在ではオリエンテと並び、初めてコントラバスを手にする人々に選ばれている、スタンダードな楽器です。      う〜ん・・・・・・有名なコントラバス メーカーが、こういう悪質な手抜き製作をしていると、“だから量産品はダメなんだ。” と全てのメーカーが手抜きをしているように言われてしまうことが多く、とにかく・・・絶対に、このような『演奏者が絶対に目に触れない部分の手抜き』は、コントラバス業界全体に対して演奏者が不信感を抱いてしまうので厳禁です。  まだ、目に見える部分の手抜きであれば、当然〈良い〉というわけではありませんが、結局のところ『演奏者に、その楽器を使うか・使わないかの選択の余地がある。』わけですから、良心的(?)です。      まぁ、それは楽器の製作側だけではなく、実際問題として、楽器を修理する職人にも『演奏者が絶対に目に触れない部分の手抜き』をする人は、古今東西に存在するわけで、色々と “面白くない・・・。” と思うことは、多々あります。  当店のHPで公開している『虫食いの楽器』を販売した事例も、同じようなことです。        面倒なことからは逃げ出したいと思うことは、生きていれば当たり前の部分はありますが、そういう弱さを、騙すように隠して、さも高い技術を駆使して製作した、または修理をしたと、使い手である演奏者に見栄を張るというのは、職人の自己保身という以上に、最終的に、その楽器を使って自己を表現するオーナーの感性というか、大きくいえば人間性そのものを否定して、陰で嗤って(わらって)いるような行為になるわけで、私は、卑劣で悪質極まりないと思います。        私自身、これまで多くの Gliga を分解修理してきましたので、全てが、このような手抜き製作をされているわけではないことは理解していますが、何が気に入らないって、技術的に未熟なゆえに、このような結果になったという痕跡が見えれば、私もコントラバスを製作してきた身としては、百歩譲って、“まだまだ若い・・・。” と苦い顔をするだけで公開せずに済ませるのですが、これは、おそらく普通に手抜きです。        “表板の修理で分解したが・・・これ、どうするさ?”  と、ちょっと頭を悩ませています。      なんだか、面白くないですね。