ピアノマニア

 数年前に『ピアノマニア』というドキュメンタリー映画がありまして、ご覧になった方もいらっしゃるかと思いますが、その中で主役(?)の調律師と演奏者が舞台リーハーサルの場面で、ピアノの音を舞台の上から『どのように音を飛ばして、客席の何処の辺りに着地させるように調律すべきなのか』と、そのような会話が出てきます。

 日頃から、ある程度の修練を積めば〈音の動き〉を目で追えるようになりますし、私も若い頃から『音の飛び方を目で追う』という技術は習得しています。  簡単に説明すれば、楽器から発せられた音が、どの角度で、どの方向に、どのように飛んで、どのように反射して、どこに着地するのかを目で追うという技能です。  もっとも、正確には『音の飛び方を耳で追える』という表現が適切かもしれませんが・・・でも、感覚的には〈見る〉ですね、やはり。

 コントラバスの場合、低音域と高音域では音の響き方も飛び方も違いますし、楽器の形状によっても変わってきます。  そういう楽器の個体差や、表板でも低音域・中音域・高音域で響く(鳴る)ポイント(場所)が違うので、その辺りも計算に入れつつ、『音を、どう飛ばして、どこに着地させるのか?』を考えつつ、確実に狙ったポイントに〈音〉を落とし込む、それが楽器の調整です。

 この『音を飛ばすような響きの調整』というのは、 “どうせ、マイクを使っちゃうし。だからジャズやロックには関係ない話だから。”  というわけではなく、結局のところ、この調整法は『音の抜けの良さ』を土台(基準)に、さらに音に方向性をつけて飛ばすという調整技法ですから、例えば使用されているマイクやアンプなどの音の癖に合わせて、楽器の音を微調整することも可能、というわけです。  ちなみに『音が抜ける=音が細くなる』ではありません。  楽器本来の響きを維持しつつ、不要な音(特定の周波数帯)を狙って、それを調整でカットしていくことで、最終的にバランスの良い音になります。

 コントラバスは低域と中高域で音の響き方・飛び方が違う楽器なので、低域と中高域では調整手段も違ってきて、そこが難しくもあり面白くもあります。

 それにしても『ピアノマニア』なかなか面白かったです。  もう、針を振り切った感のある、超マニアックなドキュメンタリー映画ですが。  DVDでは発売されていて、私は購入しましたが、レンタルも・・・あったかしら?