スピーカーの箱と、コントラバスと。

良くも悪くも、時間に余裕ができたので、常連さんたちから、これまでいただいていた『宿題』を幾つか同時並行で作業しています。    Phil Jones Bass 『Briefcase』のスピーカーユニットを使用した、オーディオ用スピーカーシステムを作ります。        エンクロージャー(ベースアンプでいうところの、キャビネット)も、製作。  今回は、なんとなく『Bass Cub』と同じぐらいの大きさで設計しています。  写真、野鳥の巣箱ではありません。    そんな詳しい話は、完成した時にするとして、今回のネタは、コントラバスの『胴体の幅と深さ(横板の幅)』の、お話。            オーディオ世界では、ざっくりと『エンクロージャーの奥行きが深いと、低音の響きが深くなる。』という印象があります。  例えば、エンクロージャー内部の容積が同じだったとしても、エンクロージャーの奥行きが深い方が、(専門的な話は抜きにして)低音に深みが出るわけです。    おそらく、JVC(ビクター)のミニコンポなどは、そのようなサウンドを狙った設計になっているのか、と思います。 https://www.jvc.com/jp/audio/lineup/ex-hr9/

 ONKYOのスピーカーにしても、妙に後ろに長いキャビネットのものもありますが、おそらく、これも同じ理由で設計されていて、一般的に小型のスピーカーシステムに、この形状が多いように思います。          で、コントラバスの話。    コントラバスは、表板の横幅によって『低音の音量感』が変わってきます。  そして、胴の深さ(横板の幅)によって『低音の深さ』が変わってきます。      一般的な4弦のコントラバスの横板の幅は 21cm で、大きな5弦のコントラバスで横板の幅は 22cm だったと思います。    たった、1cmの違いですが、楽器として組み上げた場合、だいぶ低音の雰囲気が変わってきます。        それでは単純に、(一般的な4弦の)コントラバスの横板の幅を 22cm にしたら、より深い低音が出るのではないか・・・と考えるわけですが、それはそれで、今度は楽器の響きが多すぎて、音程感と音色に輪郭のある楽器に調整するには、かなり手間がかかり、高度な技術が必要になってきます。    ただ、単純に『低音の音量感(馬力感)』が欲しいのであれば、表板の幅を広げれば、駒から伝えられる強制振動を再生できる面積が広がるので、効果は大きいです。            オリエンテ時代には、様々な特別注文に対応してきましたので、いろいろな形状のコントラバスを製作作してきましたが、あくまで私の個人的な感想としては、4弦にしても、5弦にしても『一般的なサイズの楽器が一番扱いやすい』と感じました。    結局、今、ある〈音楽〉が、そもそも今ある一般的なコントラバスの音色を想像して作られているから、〈扱いやすい〉ということになるのだろう、と思います。        『コントラバスには大きさの〈基準〉は無い。』などと言われますが、明確な数値こそありませんが、やはり〈基準〉は存在します。    だから、コントラバス職人であれば、初めて見た楽器を試奏することなく、ある程度の、その楽器の本来持つ〈音色〉を読み取ることができます。    もしかしたら、『基準』というよりも『定義』と称した方が正確なのかもしれませんが。        コントラバスという楽器にも、基準はある。     それは、コントラバスという楽器が、音楽の文化というものの中で生き抜いてきたことが証明している、とも言えます。        実際のとことろ、構造になんの基準もない楽器は、音楽の現場では扱いにくく、時代の流れに押し流されて、それを〈文化〉として確立することは難しいです。    コントラバスという楽器が、様々な音楽ジャンルで活躍しているのは、〈基準〉があればこそ、様々な種類の楽器と共演できる『仲間』として受け入れられているのだと思います。