コントラバスには、背面が膨らんでいる『ラウンドバック』と、背面が平面の『フラットバック』という大きく分けて二つの形状があるのですが、『フラットバックとラウンドバック、どちらが良いのか?』という話(問題提起?)は、よく耳にしますし、私も質問を受けることがあります。
そのような質問を受けた時に、思わず、
“えぇ〜っと、『ロータリーエンジンとレシプロエンジンは、どちらが優秀か?』という議論と同じですね。”
と答えてしまって、お客様が困惑してしまい・・・ “しまった・・・。” と思うことが、あったりします。
自動車が好きな方であれば、すぐに納得していただけるかとは思いますが、ロータリーエンジンとレシプロエンジンでは、そもそもガソリンを燃焼させる構造が違うので、燃費などでの性能比較はできなくて、ラウンドバックとフラットバックも同じように『形は似ているが、構造(音の響かせ方)が違うので一概に比較はできない。』ということになります。
それぞれの楽器の形状の歴史的背景はさておき、構造上の違いがあるのですから、当然、それぞれ楽器の音の響き方の特徴に違いは出てきます。
私の場合は、ラウンドバックとフラットバックでは微妙に調整(音の作り方)を変えていますし、(オリエンテ時代に)フラットバックの楽器を製作する際には、表の板の厚みを(全面ではなく、とある場所に限って)一般的なラウンドバックの楽器よりも 0.1〜0.2mmほど薄く削って仕上げた方が、ラウンドバックらしい独特の響きが、より鮮明に得られるので、ラウンドバックとフラットバックでは表板の削り方を微妙に変えていました。
肝心なことは、その楽器にあった最適な調整がなされているか(?)ということが重要なことであって、『鳴る・鳴らない』というのは、単純にラウンドバックやフラットバックという形状だけでは判断できないと思います。
ラウンドバックとフラットバック、楽器の購入や調整の際に悩まれた時には、(安易にネットの情報に頼らずに)お近くの専門店にご相談ください。