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これも悪質な仕事

最近、技術的な小言のようなネタが多いです。

 

 普段から愛読していただいている方々であれば、理解していただけるかと思いながら書いてるわけですが、私は何か気に入らないから批判をしているわけでもなく、当然、“俺の方が腕が良い。” などと悦に入るために書いているわけでもありません。    私が、これらの記事(ネタ)を書く大前提は『演奏者の目に触れないところで行われている、悪質な作業』です。      “これをやられてしまっては、コントラバス業界全体の信用を失ってしまう。” という事例を、正直に公(おおやけ)にすることで、コントラバス職人と演奏家の間になければならい『信頼』というものを崩したくないからです。        私自身、一応25年ほどの職人生活を送っていますので、その〈仕事〉が、担当した職人の技術的に未熟な部分なのか、それとも意図的な手抜きの部分なのかを見分ける能力は身につけているつもりですので、自分なりに熟慮の上で記事にしています。      

 で、本題。

 残念ながら、よくある話が・・・駒の足の裏。

 

 楽器に取り付けられているときは、完璧に足の裏と表板が接地しているように見えても、楽器から取り外してみると、中心部が深く掘られていて、駒の足の周囲しか表板に設置していないという・・・。

 このような場合、私も見ただけでは駒の足裏の中心が掘り込まれているとは気が付きません。

 (中心の穴は、アジャスター取り付けの際の作業跡です。本当は無い方が良いですが。)

 

 初めてご来店いただいたオーナーから『もっと低音感が欲しい』とか『音量感欲しい』と相談されて、“それでは、ちょっと駒を削ってみましょう。” となった時に初めて気がつくわけで、このような駒の立て方をされてしまうと、もう、何をやっても『低音感』も『音量感』を上げることは不可能です。

 だって、そもそもが『弦の振動を楽器に伝えない削り方』をされているのですから。

 

 

 

 なぜこのような事例が発生するのかというと、この方法で作業をすると、簡単に駒を立てられる。

 駒足の周囲だけを合わせるのですから、特に難しい技術も必要ありませんし、作業時間も短くて済む。

 そして、絶対に演奏者に気づかれることも、ありません。

 

 

 これ、自動車でいえば、車検の時にでもエンジンの性能を勝手に落とされて納車されたようなもので、自動車であれば馬力が落ちたり、燃費が悪くなれば気がつくでしょうが、楽器の場合は色々な要素がありすぎて、演奏者が気がつくということは、まず不可能なわけです。

 

 

 

 

 最近では、初めてご来店いただいた時に、その楽器の大きさや形状、板の厚み、駒の削り方から推測される音色と、実際の楽器の音色が、あまりにかけ離れている場合には、駒の足裏の手抜き作業であることに疑ってかかるようになってきましたが・・・それでも『必ず確信が持てる』ということではなく、駒を取り外さなければ分からない、それほど巧妙な『手抜き』ということになります。

 

 

 

 これが常態化されてしまうと、コントラバスという文化は、一気に衰退します。

 本来であれば調整によって、もっと音量が出て、もっと深い低音が出て、もっと音程感のある音色も作れるはずなのに、手を抜いた駒を立てられただけで、周囲からは『コントラバスという楽器は、非常に扱いにくい楽器』という評価になってしまいます。

 そのような楽器、音楽の現場で必要とされると思いますか?

 

 

 

 

 

 “まず弦楽器職人を疑いの目で見ましょう。” とは絶対に言いたくはないですし、このような手抜きをする職人は、ほんの数人だと、私は信じたいです。

 

 

 

 もう、何度も何度も申し上げますが、日頃の弦楽器職人との交流、大切です。

 

 何か気になることがある場合には、積極的に質問して良いかと思います。

 その場合、ちゃんと理論的に返答できない職人であれば、少し注意が必要かもしれませんが、ほとんどの職人たちは、理論的な物理現象として説明・解説ができるかと思います。




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